伊達利夫先生は、将碁友の会の指導対局と囲碁わくわく講座とともに、香川県のNHK文化センター高松と伊達囲碁教室でも囲碁を教えていて、生徒には女性も多く、ダジャレや突っ込みで笑いを誘いながら囲碁を面白く教えてくれると評判です。
-女性に囲碁を教えるようになったキッカケは何ですか?-
NHK文化センター高松で囲碁教室を開講することになったときは、それまで碁会所や個人レッスンなどでしか囲碁を教えたことがなく、カルチャーセンターは初めてでした。果たして囲碁を習いに来る人がいるのか?と不安の中で募集したところ、10名の応募がありホッとしました。でも、10名のうち6名が女性、しかも囲碁をまったく知らない人ばかりでビックリしました。
当時、碁会所は喫煙率が高く煙がモウモウしていて、女性が囲碁を覚えたくても行けるものではありませんでした。でも、カルチャーセンターならと思い、申し込んでこられたのでしょう。ただ困ったことに、私はそれまで囲碁のルールを知らない人に教えたことがない上に、女性に対してどんな口調で接したらいいのかもわかりませんでした。
実際に教えてみると、ちょっとこれまでの囲碁の世界と違うなと感じました。皆さんすごく明るいんです。お喋りをしたり賑やか過ぎるぐらいの教室でした。囲碁は暗く高尚、年寄りの遊びなどと思われていましたが、女性の方たちが楽しそうに碁を打っているのは、とても嬉しいことですね。囲碁は誰にでも出来るゲームですし、楽しむものですから。私からすると「囲碁新人類」に見えましたが、囲碁の普及の原点であると思いました。
-先生が囲碁を覚えたときは、どういうかんじでしたか?-
私は子供の頃、学校から帰ると碁会所に毎日碁を打ちに行っていました。よく親に叱られたものです。その頃の親たちは生活をするために朝から晩まで一生懸命働いている時代で、昼間から碁を打っているのは裕福なご隠居さんかブラブラしている若者でした。親から見れば、仕事もせずに、遊びほうけているように見えたのでしょうね。
ただ、私には先生から教えて頂いた三つの言葉が未だに残っています。当時は和室で足つきの碁盤に正座して打ち始めるのですが、上手の人が膝を崩したら「失礼します」と言ってから膝を崩しなさいと言われました。当時のおじさん達は正座が長くて参りましたよ。また、アゲハマ(取った石)は蓋に入っているのが自分の取った石で、その横に落ちているのは、万が一自分の取った石でも自分のものではないということ。勝負が終わって一目負けが決まると、座布団を持ち上げて石が落ちてないか探し回る人もいましたが。もう一つ、周りで色々な人が教えてくれますが、間違っていても反論せず、よく聞くこと。その手を打つか打たないかは自分が決めればいいんですから。この三つの教えは今なお耳に残っています。
時代も変わってずいぶん碁打ちのマナーもよくなりました。それが女性の皆さんに評価されたのではないでしょうか。子供達にも教えていますが、優秀で勉強の方もよく頑張っています。碁を打つ子供を見ていると、強くなると同時に集中力、考える力、我慢など精神的エネルギーが強くなっている感じがします。
-囲碁をやっていてよかったと思うときは?-
一番何がよかったと言えば「人との出会い」でしょうね。子供教室も長年やってますので、時々「伊達先生」って声がかかる時があります。「どなたでしたかね?」と聞くと「○○です」「えっ!お前か!」もう立派な社会人になっており、結婚して子供のいる子もいます。話をしていると昔の面影が見えます。社会人になると囲碁を止めてる子が多いようですが、囲碁から何かは学んでくれたと思っています。
私が会社に入ったときは、社長はじめ囲碁をする人がたくさんいました。昼休みなんかは碁盤の奪いあいでしたよ。そういえば、入社試験のときの面接は囲碁の話しだけで終わりましたし、研修期間中、人事課長に呼び出されて碁を打ったりもしました。囲碁のおかげで上の人たちにずいぶん可愛がってもらいました。
昔は、囲碁で社会の中の親しい人間関係を作っている感じでした。色んな職種の人とも交流でき、1局碁を打てばすぐに親しくなる、そこには上下関係もありませんでした。たくさんの人との出会いがあり、その親しい人間関係が私の財産だと思っています。
-最後に一言お願いします-
今はインターネットで全世界の人と碁を打つことが出来るようになりました。それは素晴らしいことですが、最近囲碁を打つ人からは勝てればいいという勝負にこだわった感じが伝わってきます。囲碁の一番のよさは心のふれあいです。人間関係のあり方が変わってきているのかもしれませんが、やはり囲碁を通して心のふれあいを大切にしたいですね。
2013年11月5日
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